2009-01-01から1年間の記事一覧

石は

人の手にとられなければかなりしあわせだと思う

新学期

やっと新学期 最後の3日は恒例の宿題パニック あれとあれを検索して打ち出しておいて欲しいと泣かんばかりに 頼むので、仕方なく自由研究のお手伝い。 この娘は夏中パソコンにはり付きMP3を手放さず情緒的なことばと 音を浴びまくっていたようなので それを…

焼くや藻塩の

ここに着いてまだ海を見ていない 二階の庇の向こうの瓦屋根の連なりの先に神社の松 物干し台にはあおむけの蝉の屍骸 外はこんなに乾いているのに この古い畳が沈み込むような湿気は どこから来たのだろう? 子ども達はすっかりこの地の文法に馴染んでしまっ…

響く音

かなり変なことなのか、それともよくあることなのか ある種の文を読むと音楽のようなものが頭の中で響きます。 音楽ではないんです。 コードやフレーズが変わる瞬間のふっとした感覚みたいなもの。 あることばとあることばのつながりが頭の中の同じ部分を刺…

ケロッグ

この部屋の金魚は一羽と呼びたい立った卵は一棹と 硝子の容器は全て庭に並べて突然の雨に備える 驟雨緑なす苔の惨憺 瀑布虹は不要 筒であったり袋であったりいくばくかの和解と契約によって成り立つ私の乾いた紐で緊く束ねて棚上げした叙情かな(字あまりす…

東雲まで

夜泣きする子を ひとり 隣室に 囲っていて 小さな白いねじ で 何度も この夜を巻き戻している 纏いつく網の目の間から 芽をのばした不機嫌が 周囲を探りながら くりかえし くりかえし 宥められる手を待っているけれど そんな都合のいい邂逅など この世のどこ…

八月の水

変な夢で脱力したせいか 午前中は低調でした 遅い昼食に外にでると 街道は平べったく白い光をはね返し 車が通るたびに じり…と熱せられた風が耳の外側を巻き上がっていきます ふと暖かい水が胸元に落ちて来ました 上を見ると抜けるような晴天です 水を含んで…

夢的構築物

プレハブの会議室のようなところで 何やら熱弁をふるっている夢を見ました。(ありえません) ありえないというのは夢の中でも何となくわかっていて 一体何をそんなに熱く語っているのか もう1人の私が耳をすましています。 どうやら入札か何かについて 画…

夜を歩く

何のへんてつも無い住宅地の 塀の終わりにある のうぜんかずら たくさんの花が 今朝の風雨で地面に落ちている その橙色に 夏の闇の底を 裸足で歩いた記憶が蘇る 柔らかく横たわるものの腹を踏みつけて 声のない産声と 声のない断末魔の悲鳴が交錯するような …

HIROSHIMA

[:450] 内海はのどか 六つの川は干満と共に暗い水をゆっくりと往復させ 市の中心には白い光 海沿いのこのホテルは某VIPが宿泊したらしく窓から見下ろすと 夜通し警備の人の懐中電灯の明かりが見えました。 広島には何度も来ているけれど 8月6日に平和公園…

真昼

:450 はなの木ももみぢの木も今は庭にのしかかる獰猛な黒い緑となる 跳ね返す光 そして影と影と影 竜安寺は改装中でした この石庭は夏が好き

雨中の蝉

八月なのに 冷たい雨が降る 街路樹の蝉は それでも鳴きやまない 昨日の夢を 一日かけて醒ます 非現実を空の彼方に遠ざける 思いがけない近さに 不意にあるエアポケットをなるべく 木々の外側に冷たい雨が降る 柿色をした私の無能が青褪める 昨日無機質な装置…

何を連れて

昔、逢った人の話をします。独り言みたいですが。 夫の伯母さんはどんどん店の立ち退いていった都心の一角に居を構えて いました。 はじめて訪れた時、このような場所にこのような古い作りの平屋がある ことに驚きました。 日本家屋に洋風の暖炉のついた応接…

夏音(カノン)

同じ方を向いて 同じ曲を 聴いている 近い人は 途中で急に 居住まいを正し 一つの旋律だけを 追いもとめ始める 退屈そうな素振りの下の それは いかなる形の 欲望なのか あなたの腕の産毛と 触れ合いそうにちかく それでいながら その中心に 接することを憚…

河口にて

海におりる坂道は風が吹いているから 潮のかおりがするから 遠い人 忘れ去りたい人の 記憶は途切れていく 海に入る階段は暗くて悲しいから 夢の覚め際のように覚束ないから いっそ冷たさばかり纏いつづけたい 狂っているよ と呼びかける声が さっきまで絶え…

日食

はるか昔の学生時代、上代文学専攻でした。 リハビリ気分の怠け者学生だったので、現代は重い、中世は怖い…と消去法で 残ったのが上代だったというあるまじき理由です。 そんなお馬鹿さんに、萬葉集のゼミというのは、解釈以前に「まず類歌を挙げて もらおう…

帰ってきた息子が「外に虹があるから」と言うので中庭に出たら 久しぶりに大きな虹がありました。 何人か先客がいて一緒に消えるまで眺めました 丁度いい夕刻の走り雨だったから 大勢の人が眺めたと思います 泪が零れている時のあいだは / 孤りでいても 鏡に…

海のない品川

わざわざ古布を買って 切り刻んで ならべて ちくちく縫って また布にする なんて 馬鹿なことを しているのだろうって思うのよ とパッチワークが趣味の 友人は言う それを言うなら 陳列された素直な枝や こいつなら従いそうだと思う 野性の枝をえらんで 活け…

屋上病

「屋上病ですね」と医師らしき人は言うのだった。 「あなたは屋上から眺める欲求をどうすることもできないのでしょう? こうしている今でも屋上に行きたいのでしょう? そのために生活に支障をきたしているのでしょう?それは屋上病です」 別にそんな病名を…

送り梅雨

ねじ花やつゆ草やホタルブクロのあった丘に 濡れてはりついている新聞紙 射撃場では歩哨のように立つ人が 雨の帳を横切る人に 照準を合わせかねている あれは教会の裏だっただろうか 雨の降るいつかの夜に 「容」という文字のことを考えていたことがあった …

島のお話

「お父さんは島のお墓に入りたかったのかもしれないけれど でも島の人たちはどうかしら?お父さんが思うほど思っているかしら?」 ここ数ヶ月何度も母から聞いたことば どちらかというと唯物論的な考えの持ち主のように見えて(見せて?)いた父は 自分の墓…

荒地の恋

半年ぶり位に本を読んだので印象だけの感想荒地の恋作者: ねじめ正一出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/09/26メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 50回この商品を含むブログ (32件) を見る荒地の人たちの名前を知ったのは父親の本棚の戦後詩の選集だっ…

海開き

海の近くのその街に住んでいたとき 地元の人たちはこれから来る季節をちょっと忌々しそうな感じで 受け入れているらしかった 一歩外に出るとサンタンオイルの匂いが空気の底に沈んでいる季節 迷路のような小路に車がはまり込んで○○地獄と言われるような街 遠…

さよならを言い忘れる

庇から落ちた雨粒が 沓脱石をくぼませる 大事に封印して 損なわれないまま 灰にして 遠い気配とともに 纏わり付かせておきたいもの それは 寝苦しい夜に 動いていた心臓のようだったり 裏切った人の泣きそうな顔だったり 棺の蓋に最後の釘を打つために 長い…

7月

クチナシってどうしてこんなに汚くなってしまうのでしょう? 夢を見た 梅雨の晴れ間の空を見上げると クチナシのような純白の花びらが一面に舞っている 青い空に映えてとても美しい 宗教画か何かの背景のように見える だんだん高度を下げてきたそれらは 小さ…

Mock Turtleのハードル

1Q84が本屋に平積みになっていた。 久々にチャレンジしてみたいような気もするのだけど 多分また挫折しそう。もう本を読む習慣もないし。 村上春樹作品の第一印象は ................................... (そんなことはないと思うけれど、もし万が一春樹ファ…

こどもの見る夢

死んだ筈のおじいちゃんがいる。ここは高尾山の麓で今から一緒に登るらしい。折りしもTVでは山頂で人間が自然発火する事件を報じている。「おじいちゃん、大丈夫なの?」と尋ねると「大丈夫、大丈夫」と応える。そして二人で藁を束ねる。 (娘12才) 部屋の…

水無月の総武線

気がかりなことを思い出そうとしていたら 緑にいろどられた駅は通り過ぎてしまった おかしいな 私はあの駅で降りて だれかに会う筈だったような気がするのに よつやいちがやいいだはしすいどうはしおちゃのみず 水の匂いのする名の駅を通り過ぎる かつて通っ…

素朴な疑問

「かごめかごめ」という歌についてはいろいろな説があるようですが いまさら検索する気もないのでそれは置いておいて 「夜明けの晩」ってなんでしょう? 長い長い夜をやり過ごしてやっと夜明けになったと思ったら 突然時計の針がぐるりと戻って うすあおい薄…

背表紙を眺める

ことばというのは 十人十色のプリズムで 彼あるいは彼女の世界は そこを通過して投影された瞬間に 誕生してしまうものだとして この人はこの感覚を こんな風に名付けるのかという 感嘆が許されるのなら こんな屈折や分散の仕方をする装置を抱えた人は いつこ…