2011-01-01から1年間の記事一覧

夜光

運河の横たわる工業地帯の真ん中で 外からは鍵 外は星が降っているらしい 星には結び目があるらしい 嘘つきなのに嘘が足りなかったので 足元には落ちてこない星 見わたせる景色は すべて持っていってもいいけれど 絶望を つないだ手ごと 突然持っていくなど…

形象ること

カイは、形でひとつのことばをかきあらわそうとおもって、のこらずの氷の板をならべて みましたが、自分があらわしたいとおもうことば、すなわち、「永遠(えいえん)」と いうことばを、どうしてもつくりだすことはできませんでした。 Hans Christian Ander…

道すがら

眠りより白い薄日 ひとすじの光の中にうずくまる 黙 歩くたび狭まる街の綴じ紐をほどけば風 のち野のひろがりて きた道のどこかで空と和解して雨音にいま守られる人

川辺

還流する水が草生を越える日を眠る魚に予告する空

明けの空

夜の果てで夢の残余に火を放つこの薔薇色は虚空のために

市街2

ほとんどという留保のうちにかなしみを囲いきれずにつたう雫は 内側に問いのかたちにひらかれた門 見上げれば白くけむりて 濡れたのち乾いた本を手でなぞり丘と駱駝と小石を探す .................................................................... 手渡…

市街

城塞のうちより吾を差し引けばそこより満ちる不凍湖の水

野焼き 柊 空 階 私ひとりでは生たりえずにほどく言葉は

眠りの場合

還元をくりかえしては湖しかない土地になる 夢の手前は 風無き日に青葉の落ちるその数を数えよ木の葉風無きうちに 知らずに触れた不可視の蜘蛛の糸ならむ夢の頁をひらく栞は 過ぎたことにすら未知はあって 栞を青葉を気配を 手渡されたいと思うのは 信仰とも…

食卓

したわしくて懐かしい石の肌に 左手の指をあずけて 迷いながらめぐっていく夢の隘路は いくつめかの曲がり角で突然 海の青にはばまれる 立ちすくみ 胸の内に 冷たい金属が差し込まれたかと思うと 突堤の先にひき出され 引き上げられた船の暖かな飛沫を 浴び…

白い秋

手に囲う着信ランプの赤 緑道に私の匿した少女ありて オカリナの音が波間を渡るとき失うための夢だと気付く 鳥影の横切るたびに疲弊するこのどこまでがあなたの街区 ............................................................. 私に墜落する鉄階段も そ…

遠い空のみ青い

カレイドスコープ 虚無によく似た日にかざす おもちゃのような疲労の踊り 窪みのみ目立つ草地に眠る血の下がればふかく根に寄せる水 剥落したピースの穴より降り来ては数珠玉をふと鳴らしゆくもの

暗渠まで

怖い夢の希釈ははやしふりしきる雨に倒れる塩水の壜

金木犀

書庫深く眠りを冷たき皿にとりひらけば香りの立ちあがる街

月のない夜の釦

音 がすると 音とともに ちいさく 空間がひらく 波紋のような 紙の箱 のような それを 見上げている わたし の位置 も 再び静けさが 戻ってきたとき 音は消えたのではなく 空間が閉じたわけでもなく おそらく わたしたちの方が その場から 立ち去っているの…

連休

是安則克さんが急逝されました。 以前、身内のやっていたお店で弾いて下さったことがあって、あの場に 居合わせたのはとても幸せでした。 飾られたベースを見て、急なお別れというのは 本当にとても反則だと思いました。

歌詠みよりは

うたうたいになりたし忘れしうたを持つ月無き夕べをめぐる旅には 「生きたいの?」回答不能の質問を人に自分にとても愚かに

piece2

親と子の「本当」はかならず遅れて来る気がします。 切崖の霞めば淡く面影に負けつづけたし白のモアレに

piece

おくれておくれて最後にやってくるもの 涙にしかならないもの 遠かった それらのために 真実ということばはとっておくべきかも 知れない と思うのは 今から目を瞑るための 信仰 と 言われてしまうのでしょうね

雨雲を待ち伏せする

支線の丘から このあいだまで赤土の山だった 作られた街を抜けて 多摩川を渡り 空の見える広さへ 野川を越え 何本かの銀杏や欅の大木を過ぎて かつて木造の平屋が軒を連ねていた場所から 水色のモスクの屋根を経て 空とも別れ 電車は地下へ潜る (いくつかの…

上階のピアノ

子の指がシの♭をくりかえす 半音下げた世界は青い?

2

ひとは 口でいっているほどには 真実をもとめていないのかも というのは ここ半年仕事で見つづけたものですが、 これを退けると みずからそれを証明してしまう かんじになります 題詠はできません。私がやると大喜利っぽくなるのは火を見るよりあきらか。 す…

3

新大久保ジェントルメン 2011,3/24 新宿PIT INN 梅津和時(cl) 太田恵資(vn)清水一登(p)四家卯大(cello)佐藤正治(per)

徒然

これほど敷居を低くしても さいごに書いたことばから動ける気がしないと 書ける気がしません 非現実をできるだけ平坦に見えることばにして 現実に落とし込むようにしたい そうすることでしか 揺らせない と思ったりはするのだけれど 「炎える母」で覚えてい…

白露

いくつかの転移を経てもこの夜に降るわたしには聴こえぬなにか 草原のドロップ缶もカナリアも月の花粉ははらって拾う 垣間見た景色が戻れぬ旅になるそこから遠く夕べをめぐり

重陽

こまっちゃクレズマ 「月光石のしっぽ」より ときどき吃水のとても浅い舟のようになってしまって ポケットに石を詰めたいのに どこにも落ちていない

つぶやき的 5

昔 春には銀の 秋には金の紗が ほんの僅かにかかっていませんでしたか? 秋にだけ 階段がある 塞がれたまひるの井戸の中にだけ星月があって 夜が聴こえる 言葉が音楽を捨て去ってしまった とは思えないけれど もしそうなのだとしたら 人(私)の方がそれを感…

ある言葉に

撃たれたり、共振してしまうときというのは ことば自体に出会っているときで そのことばがその人である というのはその後に思うこと というのが もしかしたら正しい読み方ではないかしら? (人 というのは人格とかではなくて) た」 でおわるものが る」 で…

解かれれば重たい眠りを乗り継いで今朝ふりしきる秋雨の椅子

夏の余り

家の窓からも見える花火を 今年は中止だったのか一度も見ませんでした。 写真は先週、私の浴衣を着て出かけていった娘が送ってよこしたもの。 ............................................................. 藍のなかすっくり白はのびあがる滅びる前の火は…