2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧
聴き取れぬ私語交わしつつ傍らを一般性が通り過ぎ行く
一倍はかつてダブルの意味でした と「人一倍」の文字は傾いで
それは厚い埃の下にあるのかも知れないし 絡まった根のすき間にあるかも知れない たったひとつの名を思い出そうとして 読む人のことを読者といいます すべての人がおそらくそうで 読むものが本とは限らない 木から離れた葉がひるがえりながら 地上に落ちる間…
マトリョーシカ 括弧の中の鍵括弧 いくつも生れ出る我々
あれは蛍?交互に点滅していたものが夜に溶けてからずいぶん長い
穏やかに喋りつづける声のすれば部屋の昏さも抑揚に沿う
風と風の狭間にあって平穏は小鳥の重さ 掌ではかる
繋がると同時にひらき思い出が流れて足を濡らす箱です
形なきものを象る名を思う たとえばアルプス洋菓子店を
遮断機の音は若葉を揺らしつつ景色の裏の傾斜をくだる
陽光に慣れていく目の内側に梅雨空へと遡行したがる魚
過去ではない 夏へ薄れる冬の日も 昨日本屋で触れた頁も
銃声がして水たまりがきて空がきて静かだ平和を弔うことは
誇りから零れて雑居ビルの裏 おそらく純粋という病は
いとわしくいとしい甘さがたちかえるカステラの紙はがす指には