2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

051:般(莢)

聴き取れぬ私語交わしつつ傍らを一般性が通り過ぎ行く

052:ダブル(莢)

一倍はかつてダブルの意味でした と「人一倍」の文字は傾いで

とわ などについて

それは厚い埃の下にあるのかも知れないし 絡まった根のすき間にあるかも知れない たったひとつの名を思い出そうとして 読む人のことを読者といいます すべての人がおそらくそうで 読むものが本とは限らない 木から離れた葉がひるがえりながら 地上に落ちる間…

049:括(莢)

マトリョーシカ 括弧の中の鍵括弧 いくつも生れ出る我々

050:互(莢)

あれは蛍?交互に点滅していたものが夜に溶けてからずいぶん長い

045:喋(莢)

穏やかに喋りつづける声のすれば部屋の昏さも抑揚に沿う

046:間(莢)

風と風の狭間にあって平穏は小鳥の重さ 掌ではかる

047:繋(莢)

繋がると同時にひらき思い出が流れて足を濡らす箱です

048:アルプス(莢)

形なきものを象る名を思う たとえばアルプス洋菓子店を

042:若(莢)

遮断機の音は若葉を揺らしつつ景色の裏の傾斜をくだる

043:慣(莢)

陽光に慣れていく目の内側に梅雨空へと遡行したがる魚

044:日本(莢)

過去ではない 夏へ薄れる冬の日も 昨日本屋で触れた頁も

039:銃(莢)

銃声がして水たまりがきて空がきて静かだ平和を弔うことは

040:誇(莢)

誇りから零れて雑居ビルの裏 おそらく純粋という病は

041:カステラ(莢)

いとわしくいとしい甘さがたちかえるカステラの紙はがす指には