2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

折らばや折らむ

誰かのいのちの端が手の中にあって 自分のいのちは握れない そんなあたりまえが たまにあたりまえでなくなってしまうとき 意味を抜き取るのはきらい? 名付けられた瞬間に 遠のき色あせた背景を呼び戻して いっとき錯覚の迷路を迷いたくなる ほんのいっとき …

母にはならない

私は絶対にこどもなんて産まない と 娘は言うのだけれど 硬質だったものの輪郭がほどけて うんざりするほど醜くなったり はっとするほど美しくなったり 見えないほど遠くなったり 重なるほど近くなったり 私は彼女を見ているけれど 彼女も私を見ている 気配…

母にはならない2

躓くのに都合のいい石のような 夜が過ぎて 雨の中、出かける娘を見送って思うのは あなたをここに送り出しておいて 自分はこんな場所には一秒たりともいられないなどと たまにふざけたことを考える私を あなたは見抜いていて 母にはならないなどと 言うのか…

手紙

前略読み書きという行為に自己確認を強いられる度合いの強い人間同士にとって手紙はあまり良いコミュニケーション手段とは言えないのかも知れません。踏み絵を交互に差し出すみたいなことはやはり良くない。とっても。まして返事を書いたら書き手も読み手も…

かごめかごめ

ことばは 私が私でなくなるまで説き伏せるために使う ここにあるのは 一晩おいて 実体の無くなった鳥の残した籠の中の羽毛 夜明けの晩に ほんとうのことを言ったことがある? それは本気の嘘をついたことがある?という問いと同じこと 愛とはただの方向性だ…

ゲーム

身近に「引き出し」という言葉をなくした人がいて 「机や箪笥にはめこまれてて中にものが入るやつ」と言ったりする 「それは引き出し?」 「そうだったかな。そうかも知れない。」 そういえばこんなゲームがあった 二人のうちの一人があることばを頭に思い浮…

谷のつく場所

見えない小川の氾濫する都下の草原に帰ろうとして都心の環状線に飛び乗ってしまい 出発も到着もないことに呆然としたまま降りあぐねていた日 窓から見た北側の線路の端に沿って崖線はつらなり、西日を浴びてあからさまな境界を形成していた あまりにも長すぎ…

蝶々

(あるいは迂回することばについて) なにひとつたぐれない 晴れた午後に 下校のこどもたちが うたいながら通り過ぎる ところで 蝶々が さくらの花にとまったところなんて あなたは見たことがあります? とおくなったりちかくなったり 音域をはずれていく声…

再度こころあてに

1年前のものを読み返してため息をついています。 その後の環境の変化を思うとあの時止めた自分の直感はなかなかのものだったのではないかと。 (嘘です。見えたものから速攻で逃げ去って、抜けていますがログを保存していたのが奇跡のようです) ここまでき…