2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

雨水の夕

空に うすく水がはられて と打って つづけることができない とおい雲のあいだのひかりのきざはしから 視線をおろすたびに すこしずつ 地上はあかるんで 街路樹も 鉄塔も 雑居ビルの看板も 外濠の石垣も 人工の谷を橋のうえから見下ろしている人びとの背まで …

長き夜に

闇の箱のいずくにかあるヒヤシンス灯ればまぼろしのごとく揺れたり なかうみは波音ひとつくりかえし汀はつきの光を溜めおかず 人工のするどき灯すらとおき夜はマレーの河ゆく舟のことなど

雪が降る

逆立つようにちりちりと 電気を帯びた季節が 終わりに近づいて すでに大方の空を冒していた春が 雪に名を変えて 地上に降りてくる 不思議ね 音無きゆえに激しきものを 窓からずっとながめていると かたちもないほど忘れているものを さらに忘れるように強い…

きさらぎ鳥 2

静物にちかづく眠りきれぎれに水から水へわたりきたりし

2

沈みゆくことばとの距離その距離の丈だけ自由 崩れたときは

川に落ちる

橋を架けるために石を積めば積むほど 不安の水位の上がる川があって 架けおわった瞬間に なにがおきたのか わたしもしりたい でもしらなくていい ゆっくりと水底に沈んでいく石が見えて そういえばそうだった 魚が溺れるのは 泳ぎではなくて 呼吸の仕方を忘…