2013-01-01から1年間の記事一覧

2013

さようならまだ覚えていない星座達さようなら持ち帰れなかった夢達

けむりたなびく

その子は古い校舎の廊下を歩く 遅れてくる足音を持った上靴を履いて 窓枠の外は冬川 渡れる石の連れて来る岸辺をさがす あるいは 自分の中心に渡る小石をさがす あと数歩 熱っぽい頭を振って 掠れた線をたどるようにして 遅れて閉まるドアが背後で断ちきる音…

空が占める割合

箱について

いつも声をおさえている 箱を持っています いま を入れる箱 入れるためにいつも空にしておかなければならない 初冬の日が白く 窓を光らせている いま 「雨が降っています」と どこからか声がして 私は、箱の奥から続く 商店街のはずれを捨てました 箱を閉じ…

宵の星

分割された南の空のどこを取る?

み空行く

枝分かれした先に思いが乗っていて もとの道に引き返そうとすると 途中で道は消えている 島のようです その島を私と呼んで暮らしています 月と地球は地質学的に似ている ということを知りました。 土星には50以上の月があるということも。 月は地球の島なの…

夜の歩道橋

三粒ほど瞬くものを見たのちに だれかの夜空にまぎれていった 誰も空を出ることができない

巨福呂坂洞門

(こぶくろざか)

読むということ

ゆっくりと沈んでいって湖の底をノックするものがある そのことに驚くのです。こんなに深くまで受け入れてしまっていることを知って 水面すれすれに飛ぶもの、水面近くを漂うものを目は眺めていたはずなのに 雪の一片のようなものが視界からすべり落ち 水底…

メモ2

4.00AM 夢の瓦礫のてっぺんで 冷たい朝の天窓に触れる

メモ3

タカアシガニの脱皮6時間の記録 という動画を見ました。 魔法のように細い足が抜け出る瞬間 全部揃っている そのことhttp://www.youtube.com/watch?v=VgCDcobtZHs

メモ4

ウインドハープのようになっていました だれが? わたしが そのように枝をのばした 聴きたくて 鳴ってしまう葉のいくつか 何を? 何を聴きたかったのでしょう 草原です (わたしではなく) 意味などいらなかった ただ長い長い草笛

メモ5

風は冷たくて 空は奥までひらけていました 十月のおわりの日曜日 夏に見失ったちいさな影が もう空まで行ったのでしょうか 手元にある明るさを走るように遮るものがある 国道を大型車両が砂塵を上げてすり抜けていって 頁のなかにひとつだけの誤植が揺れてみ…

メモ

あすは雨が降るので 風は箱に仕舞いましょう 箱のなかには すべてが入っていますね

みずうみ

福島県 猪苗代湖 毘沙門沼 桧原湖 小野川湖

2月 新しい昨日が隙間に挟まれて眠りの芯の静止する部屋 (新) 3月 傷ついた兎でしょうかさっきまで真水は甘いと言っていたのは (甘) 梅の香に各々路地は閉ざしおり行き止まりのひとつのみ目覚める (各) やがて海やがては空に還りつく淡雪という影の別…

099:文(莢)

沈黙をくるんだ布に記された文字というこの賑やかな線

100:止(莢)

水栓を締めれば川から来た水が五センチ前で立ち止まり 夜。

完走報告(莢)

走り終えて、ほっとして、少しさみしい気持ちに襲われています。 ありがとうございました。

097:証(莢)

証するもの悉く塵にして風のありかを知らせる手紙

098:濁(莢)

濁さぬようにそっと渡って夢と知る朝は光がとてもさみしい

096:季節(莢)

透明な下書き線を見せるとき季節は人のいた場所のこと

095:例(莢)

明け方の窪地に水が湛えられ解体されていく比例式

094:衆(莢)

群衆の襟に小さな蜘蛛がいて「かえりみちをわすれた」という

091:鯨(莢)

八月に鯨がやって来るような記憶を持たない入江に眠る

092:局(莢)

昨日打たれた句点の在処を探そうとすれば非局所的俄雨

093:ドア(莢)

ドアーズをはじめて聴いた 曲線を大きな雲がゆく夏だった

広島県呉市倉橋島

087:餅(莢)

金髪のピアス少女が釣銭をお餅のような手で渡しくる

088:弱(莢)

弱音ペダルの付いた空です 呟きが溢れてだれも歌い出さない