箱について



いつも声をおさえている




箱を持っています
いま を入れる箱
入れるためにいつも空にしておかなければならない
初冬の日が白く 窓を光らせている いま
「雨が降っています」と
どこからか声がして
私は、箱の奥から続く
商店街のはずれを捨てました




箱を閉じて遅れてくる霧雨に耳をすます




箱を持つ私がどこまで私であるのか
私の声がどこまでいまで満ちているのかもわからないまま
ことばはいつもその人の声に満たされて
何かを告げようとしていた
答ではないもの のがれ去りながらその人でしかない走り雨の
気配だけが 私の手の箱に残る