2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

つぶやき的4

歩道橋の上から 白い光の中 青い落ち葉と黒い枇杷の木のたわわさなどを眺めていると 耳元で羽音がたって またたく間に遠ざかっていく。広げられたもう一枚の空はいつも眼下にある。 雨の降るいつかの夜は 容という文字について考えていた。漏刻という水時計…

つぶやき的3

ベンガル湾に浮かぶインド領アンダマン諸島で、先住民が話していた二つの言語の最後の話者が相次いで亡くなり、両言語が絶滅した。(中略)2人は話し友達で、ともに2004年のインド洋津波で被災した。昨年11月にボロさんが亡くなると、ボアさんの衰えが…

ときどき冠水するレール

どこかの川沿いの夕暮れでした いいえ 教会の裏の折れ曲がった狭い道でした 薄暗い建物の染み つゆ草が雨に濡れていました どこかに行きたいと願った場所から ここがどこであるかを知る地点までが旅なら わたしに鍵をかけるのは いつもわたしのことばなので …

破線をたどる

弱い雨雲が追ってきていて 帰り道はいくつも川を見逃した 戻ってきたのは一瞬違う街のような気がしたけれど すぐにここはそういう場所だと思いなおした 動物病院の植え込みのサツキだけがいつもずっと花をつけています まとわりつく犬も 「話したいことがい…

H市

あきらめのように海がひろがって 全ての橋が落ちれば島になるのだ とそのひとは言っていた 遮るもののなにもない三角州の ただ緩慢にくらい水を往復させるだけの川に挟まれた知らない土地まで 川幅ほどのこころの距離を 出かけていき 眺め 引き返す それしか…

地図をひらけば 夜は

雨脚が弱まって やがて止まった その次の日は 見えてしまうものの中の 言えてしまうものだけで 手紙を書けばいいと思いました けれども そのためには 途方の沖の どこかのフィヨルドに しまわれている ことばを 探しに行かなければならない 夜に地図をひらい…