2015-01-01から1年間の記事一覧

失踪するひとが、言って出ることばは 「ちょっと煙草を買ってくる」が多いとききました。 日常のまま、日常の隙間を通ってどこかへ。 女性だったら、「ちょっとお豆腐を買ってきます。」 というかんじかな。わたしがこどもの頃だったら。 今年の年末も慌ただ…

東京に

仕事納めで早く終わったので、どこかでお蕎麦を買って帰ろうと思いました。 いくつかお店が浮かびましたが、私にはどうも足を踏み入れたくないエリアが あるらしい。 六本木までは平気だけど、麻布十番は無理。 赤坂は平気だけど、見附には行きたくない。 悲…

Christmas Eve

昨日、散歩で腰を痛めて、今日は仕事を休みました。 それなのにこどもは、夕方のバスでスノボに行き、明日の夜帰ってくるため できれば今日の昼にクリスマスらしいごはんを食べて行きたい などと言います。ここ数年、このパターンが多い。前日なのに。 パエ…

longest night

ベランダにふってきた銀杏の葉を とりあえず植木鉢に入れておいたら 鳥が眠っていました。 こんなところでも、眠るものなのかと 驚きました。安心して。 忘年会が二つありました。 パーティは途中で抜けるのが好きです。 駅まで夜を通って帰る。 姪ふたりの…

『森のカフェ』

映画を見ました。 一時間ちょっとの短編(コメディー)ですが、光と色彩と音楽と そしてことばとが、程よく詰め込まれたような映画でした。 「私」という病 をどう健やかに病んでいくか、現実を作り出すのは 見えているものの強度かもしれない というような…

太平洋とも瀬戸内海ともちがう 私の知らない海の色でした。 空港で、駅で、突堤で、バス停で、見知らぬ人に話しかけられました。 やわらかい私であったのかも知れません。

ふさふさとしたものが生えた何本かの 古くて大きな楠をみました。 洗われた骨のようなものではなくて ふさふさとした古いもの。 年の終わりにおみくじをひきました。 ウソという鳥の名は口笛の古語からきているそうです。 立ち方が神官みたいに偉そう。 おみ…

青学のツリー

つづき

たとえばサラエヴォあるいはベルリンー儀式的に殺害され、あるいは苛酷な分断を経験したこれらの都市を、そこに生まれたわけでもなく、暮らしたわけでもない者が突然に、「私」の都市、「私」の記憶として見出すことが可能になるのは、まさに都市がつねに、…

地形図や地誌を読むように

ことばを読んでいるときがあります。 橋をわたり、海岸線を巡り 高低差をはかっているうちに 重層化している知らない街の 知らない間に音楽が流れています 記憶の中の既にない都市がいちばん音楽に近い 都市が心的装置の隠喩でありうるとしたら、それは都市…

手を動かすこと

編み物は好きですが、ずっと継ぎ足した一本の糸で模様を編んできたものが終わって 糸をパチンと切って鋏を針箱にしまうのは、夢を見ない眠りから醒めたような、もどってきたような さみしさがあります。手仕事はどれもそう。

夜空に目が慣れる

郊外の駅を出て 数分歩くと 冬の星があらわれてきます 私は現れた と思うけれど あらわれたのではなくて ずっとあったもの 夜空に目が慣れるまでの 星がとけている空の数分間に 名前があるといい たとえばそのときの人は 虚空の結び目だよ と

冬至祭

交差点の雑踏が消えて、夜明け前の海になる 確かめない 残された未知の記憶のほうに行く 冬の夜道のパン屋さんの匂い を呼び寄せたりしました。 寒いですね。 今日は帰ってきてはじめて暖房をいれました。 生姜を入れた紅茶とシュトレンも一切れ食べました。…

ななかまど おもしろいひびきです。 何度も言ってみると、ふるくてあかるい記憶につながりそうな。 出かけるときは、いつもそわそわと手につかず、結局何の準備もしないで 出かけています。

魔法

毎日箱に入った柿をたべて、面倒な仕事をして、帰ってごはんを作って、 犬の散歩に行って、少し編み物をして、ほどいて 私にはしまうべき場所もことばもないのかしら と思ったりしています。 最近もうひとつ驚いたのは、柿を渡すために妹と会った際、旅行の…

四谷から飯田橋までの間を走る総武線から お濠を眺めていると 11月になったら鴎や鷺がやってきて 毎朝それを数えてみる と あなたが昔、言っていたから 数えてみたよ。そうしたら数年前の雪の日に 運動会みたいにたくさんの鳥の来る朝があったよ 凍った水の…

ぬぐやまつはる

いろとりどり を脱いで 木は空を着る

鎮痛剤がゆっくりと 効いて 頭痛がすこしずつ ほどけていって つめたい朝の 静かさに行き着く なすすべのなさ そのとき 愛を受け容れる函について 考えます 雨の ふりしきる雨のむこうを すかし見るときも 無力な私を内側にぴったりと 抱えているとき 私はや…

紙ふぶき

たとえば 自己愛 について考えるとき、 わたしがわたしであろうとするその限りにおいて 美しいものはみな、他者のなかにある というのは少しも矛盾しないし 超自我を他者に投影してしまうのとも 全くちがうと思っています。 美しいものを外に求めないで、一…

2

冬と 冬の石畳みが好きで 悲しいことがあったあとも きらいになることはできなかった 明るい何かを求めるよりは 明かりを灯すこと 暖かい何かを求めるよりは 冬の支度をすること それしかできないから それだけのこと それだけのことを、私にさせてくれる そ…

冬支度

「だからね。行き過ぎた自己抑制や倫理主義は 結社の中だけで完結して 他者を必要としないし、必要とされる筈も ないんだよ。歴史が証明している。」 という大きな声が耳に飛び込んできました 居酒屋の遠い喧騒のなかで ねえそれではあの人たちは?あの十二…

光の足元に

水面のように夜がとどまってどこまでも小さくなって歩いていけそうな気がしました。

truth or dare

冷たい水が夜を流れる速さ のあと 冬空に紙箱がひらいている 紙の手触り 片側車線を 私にもあなたにもいない姉の話が行き過ぎる largo 届かせまいとする ベールのような日の光 その橋の上? 菜の花畑で花から花へと白い蝶が 羽ばたいている無音のにぎやかさ …

2

遠く日々佇み顔の可視の鹿不可視の鹿の他見ずただ響く音(回文 のつもり) 記憶に灯した火である秋の右側が今でもほんの少し明るい

秋の右側の火

芭蕉、去来、蕪村、一茶のとてもポピュラーなものだけ入った 俳聖カルタ というものを平泉でこどものお土産に買いました。 秋の句は歌とちがって「さびしき」が入らないからいい。 鹿が秋の季語だと知って、鳴いている動画を探しました。 あんなに高い声で山…

つなぎにふを入れます

今週は風邪引きのせいで、サーモスタットの壊れた機械みたいになり、 とうとう一昨日は休んで一日寝ていました。薬で眠ると根こそぎ奪われる感じがします。 テレビでは「つなぎにふをいれます」といっていました。 ふ とはなにかしら とばかり考えていました…

誰かになる

満席の新幹線に再び揺られているうちに、久しぶりに熱が出ました。 ずっとマスクはしていたけれど、病院で人に伝染していないか心配です。 怪我をした人は麻酔から覚めて、ずっと私の手をはなさずに、 何かを訴え続けていました。 認知症を患っているので、…

雲のよう

2日ほど、怪我で手術をする人の付き添いをすることになり 満席ののぞみに乗ってH市に向かっています。 久しぶりに義姉に会うのですが、葬儀以来はじめてかどうかが 記憶から抜け落ちていて、とても心もとない気分になっています。 書いて消してしまうと、な…

木枯らし1号

修飾語のついた愛のみ行き交ってねえ犬そこは寒い場所だよ

あなた方三人は

「姉妹なのですか?」と旅先で、二人の人から尋ねられました。 驚いて、「似ていますか?」と尋ねると、そういうことではなくて 友達同士の旅行にしては、会話が少ないから とのことらしい。 なにか釈然としなかったし、もっと言いたいことがありそうな気が …