2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

川からもどる

( )はかなしい。今夜は景色を消去して括弧の中で朝まで眠る

水の街

見上げるたびに自分の街をそれていく 雨の通路の線上にいて 鳩の瞼は 本当はくらい青空と覚えられない雲のかたちを 人形の片手を見ている 夜が雨に雨が夜にもう溶けてしまって 人も街も今は地下から枝を経て空へと水をめぐらす装置 草の香の轍を踏んで空をく…

暗闇にゆらめく不思議を消す夢を巻き戻すたび色はかなしい 誕生日にロウソクを立ててお祝いする理由も 願い事をした後で吹き消すわけも なんとなくわかったような気がしました。 (気のせいかも知れませんが) ひんやりとした炎の記憶につまづいて雪降る夜の…

春の影

華やぎをおろしつつ行くその影を踏むときどこか私が痛む 風吹く道に春の卵を置きに行くさみしいものの発芽の前に −(マイナス)の水面に遠く投げられた浮きのようです0(零)という月 一本の木があり揺れているというかつて扉のあった場所には −−−−−−−−−−−−…

菜種梅雨

歯車を夜に浸してとおく近く振り子のような雨足を聴く 落ちた花も土鳩も雨に洗われて許されたときの生の危うさ 擦り切れた問いと答の眠るとき呼吸する春を知るものすべて 春の手紙を届けた家の表札を裏返しつつ行く配達夫 夢で池の周りを一巡二巡しました。…

櫻2

さいごまで白い過剰をつみあげて落差の風を待つものが立つ 満ちてしまえばどこにも行けないものが、戸外で静かな夜を支えています。

知らない人達と同じように上を見上げながら川沿いの道を通って、同じように道を はぐれて帰ってきました。 冷めたばかりの骨の欠片のようだと思っていた花は、よく見れば女の子を飾る貝細 工のようにも、小さな人の薄くて柔らかい爪のようにも見えました。

四月の魚(Poisson d'avril)

物云わぬ紙の魚を泳がせる背 ふざけているわけではなくて 青草の石に靡けば葬の字のみえかくれする春の背表紙 この本に栞はいらないたぶんもうどこから入っても潮騒 光と色と風うつくしき線上をゆめが走れば凶という空