ほの暗い戸口であげる手が白く艶やかでした遠い小母さん
通過するホームは雲への突堤にベンチは雨の祭壇に似る
桃の実のなかで晩夏の点滴がしたたりおわる午後の静けさ
どの二点も結べば延長線上にあなたも私もいない夜の海
曖昧という文字から不意に一筋の錆色をのせ秋風が吹く
かなしみの手前の水をめぐらせてゆく人あまたいづれのときも
倒立の像はかなたの夕ぐれに隠れ続けた最後のひとり
朝はくる 快と不快の波をゆく眠りを乗りつぎそこねた場所に
ギンヤンマ無音をよぎり原色の夏は記憶の底へとかえる
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