2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

015:艶(莢)

ほの暗い戸口であげる手が白く艶やかでした遠い小母さん

014:壇(莢)

通過するホームは雲への突堤にベンチは雨の祭壇に似る

遠花火

013:実(莢)

桃の実のなかで晩夏の点滴がしたたりおわる午後の静けさ

012:延(莢)

どの二点も結べば延長線上にあなたも私もいない夜の海

011:錆(莢)

曖昧という文字から不意に一筋の錆色をのせ秋風が吹く

009:いずれ(莢)

かなしみの手前の水をめぐらせてゆく人あまたいづれのときも

010:倒(莢)

倒立の像はかなたの夕ぐれに隠れ続けた最後のひとり

007:快(莢)

朝はくる 快と不快の波をゆく眠りを乗りつぎそこねた場所に

008:原(莢)

ギンヤンマ無音をよぎり原色の夏は記憶の底へとかえる