ときどき冠水するレール


どこかの川沿いの夕暮れでした
いいえ 教会の裏の折れ曲がった狭い道でした
薄暗い建物の染み
つゆ草が雨に濡れていました



どこかに行きたいと願った場所から
ここがどこであるかを知る地点までが旅なら
わたしに鍵をかけるのは
いつもわたしのことばなので
このねじくれたレールは 
何度も乗り換える必要がある



あるときは ひざかりの廃屋の扉をひとつひとつ開けはなってみる
迷いながらたどり着いた幕間のスロープは
射撃場の丘に繋がっていて
怖れとこころの震えはいつも紙一重です



   ( 射程距離にはいりなさい 私
    失うということ を失うところまで
    わたしの終わりを栞のように挟んだ本の
    閉じた背表紙のむこう
    あり得たかも知れない未来にふと紛れ込む )



原因とは別の場所に
いつも不意に現れる森への入り口



いなくなった夜啼き鳥は
ただ黙って夜の枝に身をあずけていました
いいえ 遠い草原を飛んでいました 朝に導かれて



そのどちらでもない場所 
途中の横道に
ほんの小さな自由のための 解錠のことばが落ちています
かがんで拾い上げれば
並走する風の道が一瞬だけ交差する
見つけたそこが どこか