けむりたなびく



その子は古い校舎の廊下を歩く
遅れてくる足音を持った上靴を履いて
窓枠の外は冬川
渡れる石の連れて来る岸辺をさがす
あるいは
自分の中心に渡る小石をさがす
あと数歩
熱っぽい頭を振って
掠れた線をたどるようにして



遅れて閉まるドアが背後で断ちきる音が
丁度足音と釣り合ったとき
足の二本は枯草の上
鳥の羽ばたきも犬の吠え声も
とおくとおく聴こえない
光まじりの北風が耳朶を叩き
スカートがはためいて
巻き上がるような苦しさと喜びのなか
思い出されようとするすべての前で
その子は自分の身を抱いている