雪が降る

                            


逆立つようにちりちりと
電気を帯びた季節が
終わりに近づいて



すでに大方の空を冒していた春が
雪に名を変えて
地上に降りてくる



不思議ね
音無きゆえに激しきものを
窓からずっとながめていると
かたちもないほど忘れているものを
さらに忘れるように強いられているような
その強いられた痛みが
地上に春を繋留するような



ここを過ぎて
なにごともなかったかのように春になることだけを
今の私は待ち望んでいる
そののちのひかりあふれる残酷な暗渠なら
私はいくらでも越えていける