母にはならない

                                       


私は絶対にこどもなんて産まない と
娘は言うのだけれど


硬質だったものの輪郭がほどけて
うんざりするほど醜くなったり
はっとするほど美しくなったり


見えないほど遠くなったり
重なるほど近くなったり


私は彼女を見ているけれど
彼女も私を見ている
気配を消したつもりで


瞳の中に怒り
そのなかに
許したくて許したくなくて許されたくて
仕方の無いどうしようもなさが
蝋燭の灯りのようにゆらめいていて


私から抜け落ちたあの頃の私と
ここでまた出逢ってしまったような
許したように許されてしまう予感のような
幸福といってしまってもいいような
喪失感と息苦しさを
一体どんな風に
この人に伝えようか