ゲーム

                                          


身近に「引き出し」という言葉をなくした人がいて
「机や箪笥にはめこまれてて中にものが入るやつ」と言ったりする



「それは引き出し?」
「そうだったかな。そうかも知れない。」



そういえばこんなゲームがあった
二人のうちの一人があることばを頭に思い浮かべて、もう一人がいくつ質問してあてるかというゲーム
回答者の答えは「はい」と「いいえ」だけなのだけど
どうしてそんなに潔く割り切れるだろう?



「それは生きていますか?」   「はい または いいえ」
「それは食べ物ですか?」    「はい または いいえ」
「それはさわれるの?」      「はい または いいえ」
「あなたはそれが好き?」    「はい または いいえ」


 
一つ一つことばを落としていく人とこうしてことばを無くしていく私にこのゲームは高度すぎると
思うのだけれど



いつかこんなことをする日が来るかも知れない



「それはうごくもの?」     「はい」
「それは見えるもの?」    「いいえ」
「それはここにある?」     「いいえ」
「それを思い出す?」      「はい」



無とはそれ程悪いものではないかも知れないと人に言われて
そうかもしれないと思ったりする



「それは風ですか?」
「そうだったかな。そうかも知れない」