背表紙を眺める


ことばというのは
十人十色のプリズムで
彼あるいは彼女の世界は
そこを通過して投影された瞬間に
誕生してしまうものだとして


この人はこの感覚を
こんな風に名付けるのかという
感嘆が許されるのなら


こんな屈折や分散の仕方をする装置を抱えた人は
いつこの装置を捨ててしまうのだろう
とか
このまま抱え続けてどんな死に方をするのだろうと
思うような読み方だって
許される筈だ。


これが悪意だというなら
詩人にせよ歌人にせよ
読む者へ悪意が足りていないということだ。
どこかの本屋のどこかのコーナーで
そんな風にしか出会えない
ことばと人がいる
偶然の幸運あるいは
月並みな悲劇として