東雲まで


夜泣きする子を
ひとり
隣室に
囲っていて


小さな白いねじ

何度も
この夜を巻き戻している


纏いつく網の目の間から
芽をのばした不機嫌が
周囲を探りながら
くりかえし
くりかえし
宥められる手を待っているけれど


そんな都合のいい邂逅など
この世のどこにもないのだと
どうやって
この子に伝えよう?


この街に
無音の夜はない
振り払う腕
泣き叫ぶ声の上に
強引に
巻かれた
ねじの音が
幾重にも
幾重にも



.....................................................................................




眠りがやってくるのは
見えない後ろの闇の中ではなくて
顎の下あたり

     
抗い疲れ
探り疲れた手から
ねじは落ち


見守っていた
生き物が
遠慮がちに
足元で
丸くなる



そのとき


後ろから来るものは
いつも気配だけ


「先に行ってるね」


閉じかけた貝のような
耳元をかすって


いつものように
「うん」と応えれば


正面の扉を開けて出て行く
不透明な朝へ


冷えた空気が
流れ込み
動かぬ夜が薄れ始めれば


ひたひたと水の寄せる
静寂



転がったねじは
岸辺の
杭の
根元



「どこで待っているの?」と
いつか
聞くだろうか?私は