雨中の蝉


八月なのに
冷たい雨が降る
街路樹の蝉は
それでも鳴きやまない



昨日の夢を
一日かけて醒ます



非現実を空の彼方に遠ざける



思いがけない近さに
不意にあるエアポケットをなるべく



木々の外側に冷たい雨が降る
柿色をした私の無能が青褪める
昨日無機質な装置にはさまれた
やわらかい生き物は
既に息絶えて



雨中の蝉は
それでも鳴きやまない



眠っている誰かを
おこす