海のない品川
わざわざ古布を買って
切り刻んで
ならべて
ちくちく縫って
また布にする
なんて
馬鹿なことを
しているのだろうって思うのよ
とパッチワークが趣味の
友人は言う
それを言うなら
陳列された素直な枝や
こいつなら従いそうだと思う
野性の枝をえらんで
活けた挙句
恐ろしく不毛な空間を
作ってしまう私の方が
よほど馬鹿な上に
罪深い
もうすぐ夏休みで
私も子どもも長いお休み
それなのに
使っている香水が底をついた位で
外出すらおっくうなのは
親知らずが痛いような気がするからかしら?
外は熱の篭った低い曇り空
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白い紙の上で
ちいさな蟻が灼かれて死んでいた
品川の駅で
一本の矢印になって
台地から低地へ
低地から埋立地へ
たどりつけない海が揺らめき立つのを
夢見ながら
斜めに斜めに
無人の街を歩いていく
あの物流倉庫の向こうに
運河があればいいのに
もう黒い運河でいい
風がふけばいいのに
熱風でもいい
花を持って会いに行っては
花だけを枯らして戻ってきた道
多分それていく方向から
海は現れる
今はまだ台地