屋上病


「屋上病ですね」と医師らしき人は言うのだった。
「あなたは屋上から眺める欲求をどうすることもできないのでしょう?
こうしている今でも屋上に行きたいのでしょう?
そのために生活に支障をきたしているのでしょう?それは屋上病です」
別にそんな病名を聞きたいわけではないと私は答える
「私はただ普通に世間とかかわりたいだけなんです」
「ただ普通に!!!」 医師は楽しそうに言う 「それが問題です」
「あなたの普通というのはすごーくまちがっている。落下と衝突を通し
てしか世界と関われないなんていうのはねぇ」
そんな話をした覚えは全くない
「いい考え方を教えてあげましょう」医師は立ち上がって私を制し
「あなたと私だって世界とのかかわりのひとつ 得がたいことですよ 
3月でもないのに そして」
「この石段だって屋上!」
彼は階段をぴょんぴょん飛び降りながら遠ざかり
大きな銀杏の木のかげでもぐもぐと口を動かしながらこちらをうかがっている
全く厄介な兎だ ここを飛び降りろって?