送り梅雨


ねじ花やつゆ草やホタルブクロのあった丘に
濡れてはりついている新聞紙
射撃場では歩哨のように立つ人が
雨の帳を横切る人に
照準を合わせかねている
あれは教会の裏だっただろうか



雨の降るいつかの夜に
「容」という文字のことを考えていたことがあった
反復を汲み置く器はないものかと
またある日には
鉄筋火薬セメントの購入
その正統な使い道と 朽ちる道



反復を汲み置く器はとうに溢れ
過去は緩く流れて足を濡らし
つゆ草のゆれる幕間のスロープを
ゆっくりと横切る
懐かしい影が見え



新聞紙がひるがえり
丘のむこうの朽ちた公道に
銃声が響くと
全ては速やかにろ過されて
上澄みだけが夏にむかっていく