荒地の恋


半年ぶり位に本を読んだので印象だけの感想

荒地の恋

荒地の恋

荒地の人たちの名前を知ったのは父親の本棚の戦後詩の選集だったけれど
当時15才の私には眩いばかりで結局読むこともせず現在に到ります
北村太郎という人は恐ろしく暗い話なのに何故か読んでしまう
小児精神科医アレックスシリーズの翻訳者としてしか知りませんでした
内容は彼の田村隆一の妻との恋にはじまる晩年の道行
オール読物に掲載されていたとのことで普通に読んでも話題満載で十分面白いです



家庭の秘密や当事者の心の機微まであまりにも書かれていることが
モデル小説として最初は不思議でしたが
この本には「しかけ」があって各章に北村太郎の詩の題名が付き
フレーズが書いてあるんです
こんな言葉を書く人はこんな風に考えるだろうこんな風に振舞うだろうと
次第に慄きながらページを繰ることになるでしょう



そして彼の後半生が幕を下ろした後の一篇の詩



この小説は生きること、生活することと「ことば」のお話です
悲惨だなんてとんでもない。作者は最後にあのような詩を書いた北村太郎
という詩人を心底肯定し、憧れているのだと思いました  (作文…?)


   
    (蛇足)田村隆一という詩人がもし書かれたような人ならこの本を読んで
       「ちぇっ。いいなぁ」と羨ましがったんじゃないかと