明け方に



夢を見ました



街灯のない夜のどこかで
男の子(幼い頃の息子の友だち?)を家まで送っていく という夢
こっちの方角でいいの? と尋ねると
どこからでも帰れる と小さな胸を張る
そんな筈はないでしょう?
ここは私がつくった地図なのだから



声明や数唱の流れているような
いくつもの未明の川を越えて 地図の
透けるほど薄い方へ歩いていくと
そこはもう私の知らない
幽かな声だけが流通する場所でした
振り向くとその子はきっといないので
こんどは自分の帰り道をさがす



とても時間がかかったような気がしたのに
目が覚めたら数分しか経っていませんでした。
夢というのは別の時間でひらく
種のようなものかもしれない



さまざまな分岐があったり
懐かしい場所に行き着けなかったり
さみしいとはためいたり
破れ目から落ちて
人に会って困らせてしまったり



濃く薄く広さを変えながら
地図は日々作りかえられています
自分の作った地図に迷わない人なんて
私には想像すらできない
外から移植された徴のような樹木
入れば出られない森 
遠いところから 音楽のように満ちてきて
足を濡らす 見えない小川
最後まであの子は認めなかったけれど
私たちはみな迷子なのです