You must believe in spring.



方向音痴なうえに
空も見上げられないようでは
斥候には不向きね
それでも今日は春を奏でる人を見た
もう少しすると
私によく似た娘が
道端の花など持って
石をけりながら帰ってくる



娘に言ってみる
一番難しい迷路は
星のない空の下の海や砂漠やただの荒野
認識と直感のあいだに
距離が横たわっているときに
立ちあらわれる
意志の方位磁石は
そこではあてにならないかもしれない



でもここを出て
抱えきれないほどの
花を抱えて
あなたは迷いに行きたいのでしょう?
破れた有刺鉄線の間を
いくつも通り抜けて
通り抜けるたびに
花を散らして



長い喪裾のような影をぬって春を弾く人は駆けていく



その花をたどってくれる人が
いたって
いなくたって