白い暦

                    うたにできなかったスケッチ


..............................................................................月曜日


衛星に支配される というと
育った場所の
大潮の海のことを思い出します
行き場の無さが月に2度
身勝手に寄せるように思えた
月ごと闇ごと寄せていた夜のこと



..............................................................................火曜日


「だれかピアノを弾いていたでしょう?」
蓋は開けられて
赤いキーカバーは床に落ち
鍵盤は突然横切った指に
驚いて疲弊している
動かなくならないうちに
聴こえなくならないうちに
どうしても弾いておかなければならない
フレーズがあったのです



..............................................................................水曜日


実家の乾いた水盤の中に剣山がひとつ転がっていると
水をはり 庭に出て 花を切ってこなければと思うのは
何故でしょう?
「殺風景」というのは文字通りどう考えても後者なのに



...............................................................................木曜日


どこかで烏が鳴いているような気がして
何度も後ろの木を振り返る私は
今朝、固い林檎3個を
芯ごと一刀両断した私



...............................................................................金曜日


冷たさを指で確かめすぎて
耳の銀の細工が熱にぬくもる感じにいたたまれなくなり
夜明けの庭の鉄柵に
わざわざ触れてみたりする



...............................................................................土曜日


夕映えの迷うべき土地まで
たどりつくのに
迷うための地図しか持てない
あらかじめ引かれた線には
生涯慣れることのできない者でした
と言われてしまいそうな気がする
空転して 空転して 空転して 空転して



..............................................................................日曜日


余白が意識を占有し
網膜を焼く眩いものが
不意に訪れる
その時 身体は後ろに
苛酷なものの前に
引き出される私は どのような私?


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