鳥のことなど




初蝉は聴きましたが、今年は遂に一度も夜鳴く鳥の声を聴きませんでした。
このクロウタドリ公民権運動のことだそうです。



                
騒がしい地上を平定するために天から遣わされた天若日子は、
地上の大国主命の娘、下照比売と結婚して8年間報告をしなかった。
そのため、雉の鳴女が訊問のため派遣されたが、天若日子はそれを
天つ神から賜った矢で射殺し、その矢は天上の天照大神と高木神の
ところまで届く。高木神はもし天の命をあやまたなかったならば
矢は中らず、謀反の心があるなら禍あるよう誓約して矢をつき返すと
矢は眠っていた天若日子に命中して命を落とす。その喪の場面

其処に喪屋を作りて、河雁を、岐佐理持きさりもちと為、鷺を、掃持 ははきもちと為、翠鳥そにどり(カワセミ)を御食人みけびとと為、
雀を碓女と為、雉を哭女と為、かく行ひ定めて、日八日夜八日以ち遊ぶ。


古事記のなかで、当時の殯のようすが(鳥によってですが)見出せる唯一の記述だと
言われています。(誰が殺したクックロビンみたいです。)



この喪に阿遅志貴高日子という天若日子にそっくりな神が弔問に来て
両親が「死んでいなかった!」と喜んだことに怒って、剣で喪屋を切り倒し、
足で蹴飛ばして飛び去っていくのですが、その同母妹の高比売命が間違えられた
兄の名を顕わそうと歌ったうたにたなばた(弟棚機)の語が出てきます。
割と唐突に。




万葉集に七夕の歌はたくさんありますが、家持のカササギの歌は入っていません。


鵲の渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける


カササギの群れは中国の七夕伝説で、織女星を背に乗せて天の川をわたる。
日本では水辺で機を織りながら待つ。時には水の生き物になって。


芭蕉は三冊子で

かさゝぎの哥は、夜をうば玉といふより、かさゝぎの橋と夜るくらき空のことを
よめる也。空の事を天のうきはしなど橋にいひたること多し。
たゞ夜のくらき空をたる趣向、此うたばかり也。


橋に置く霜とは星のことかな。
写真でみたカササギは風切羽の白さが美しい、黒い鳥でした。
ものがたりが橋をかけたのは、その他の夜があまりにも冥いから。
触れられる虚構と触れられない虚構があるだけ でしょうか。
あるいはフレーム。井戸のように深く水脈から一杯の水をくみ出す事ができるか、そうでないか。
カササギ。巣だけでもいいから一度見てみたい鳥です。