相聞



きく (聞く聴く)というのは
受身でなく
ひとつひとつの音に
どれだけ自分を開けるか かも知れません



きこえ というのは

落ちてきた音で
自分のなかの
開かれた領域を知ること



古い古い歌集をぱらぱらとひらく
よろずのことの葉
肝心の場所はいつも秘密
葉群の翳



歌謡から音を落として
うた になったとき
ひとりひとりの抒情が
あらわれた 
声を出して歌う 音のかわり に




閉じている県境
そのときから読むことは
ことばに自分を開くもの になった
そうでしょう?



秘密の上をぱらぱらとひらく
風が吹いて ふとわからない 
相聞 とは美しい



相互いに聞きながら
開かれたその先に
踏み越えて会う場所
夕風と草木を閉じ込めた庭
なにか歌を挙げていいたくなるけれど その身振りでは
ことばは音のように沈黙しないことが
きっとわかってしまう