Sésame, ouvre-toi


ことばは音のように沈黙しないことが
きっとわかってしまう




沈黙について 静寂について
どれだけ語ることができても
語ることの中に 静寂はありません





(私の知っていることばの世界では)




歌謡から音を落として
うた になったとき
呪術師は消え去りました 
消え去ったけれど




呪術は消えず、ばら撒かれたのでしょうか?
呼びかける対象に作用する力ではなく 
呼ぶこと それが
自分自身に及ぼす
そんな力として





大きな意味に乗って浮上したり
なにかをくくって自分から切捨てたり
いまでも十分その力は信じられています
馬鹿げていますか? でも
表わすことの 何割かはその力に依っていて
行使しますか? それでもことばを
意味のひしめく世界で 





もし現代に
呪術師がいるとしたら
対象とことば ことばとことば
ことばと私のあいだにある空隙を



意識せずに横切ろうとする私が
意味にたどりつく何分の一かのあいだに
解体してみせてくれる
そんな人のこと



その空隙から世界が見直され
思いがけないものが自走する
ようやく静かさを知ることが
できるかもしれない そのきっかけが
解錠の呪文なのか
ことばではない何かなのかは
わからない 問いません