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花がついてる と髪に手をのばしました
細く開けていた窓からも
桜の花びらが降りこんでくる



千の氷の粒に身構える季節からほどかれて
せめて誠実でありたい という
自分本位の願いのなかに
語らずにいられない欲望と
決して語らない倫理が拮抗する
そんな余地からはいつも遠くありたいと
思っていた筈でした。 弱いから。




ですから花野とは
なんて無力なことばなのだろう と思いました。
すべての問いの抜け落ちたあとの
感傷みたいだ と。 だから
おかえりなさいの愚かさと悲しさが
こんなにも 手放しのようにそこにあるのだと