4

上代〜中古〜中世の歌の変遷(まとめ)

もともと、虚詞のもつ同時性と二重性から発祥した<和歌>は、虚詞の<物>
を叙する部分に共同の<物神性>がなければならなかった。この物神性がな
くなったとき、<物>は歌作者の<心>だけにかかわるものとなり、また作者
の<心>にかかわるかぎり、必要なものとなったのである。この必要性は追
いつづめてゆくと、音声の言葉の掛け合いという発生当初とは異なった意
味で書き言葉のなかで、上句と下句が分立する契機につながるものとなっ
た。つまり、ありあまる<意味>をかかえてしまうようになると、ふたたび
上句と下句が分割するほかに形式をたもてなくなったとみればよい。


..............................................................


この本の中にははっきりと書かれていませんが、その後の連歌や俳句の隆
盛へと繋がっていく必然的な流れである という風に読めます。
また、物神性の消滅に関しては、仮名文字の波及以外に、やはりどう考え
ても仏教の影響があるように思います。(仏教からは狂言綺語 といわれ
ても)この本では触れられていませんが、それはもしかしたら「西行論」
に書かれているのかもしれません。(死ぬまでに読もうと思いました。)


途中、考えがあちこちに走りそうになるのを「ちょっと待って」と繋ぎと
めながら読み進めるという経験を(文芸)批評では初めてしたような気が
しました。読みながら、真偽ではなく「そのように考えられる」という一
本の系に貫かれているような安心感はどこからくるのだろう などと考え
たりしました。