卯の花腐し


吊りあげられた白い場所から
旅に出したわずかな風が
速い南の風となって
戻ってくる 雨を連れて

(落ちなさい)



そのひとことで
はじめて自分が落下するものであることに気付いた雨が
散り方をやっと思い出した花を
地表に張り付かせて
過ぎるはずだったあわいの月が
黒いインクを滲ませながら 慌しく折りたたまれていく
自らの季節を思い出したかのように それを写し取って

(濡れなさい 指を汚して)



雨が降ってきたら
風は再び
箱の中にしまいましょう
箱の中には疲労とともに
あなたも入っていますね