箱崎

              


水没した地下書庫の
天井で 羽化した蝶が
12階の非合法の温室まで
たどり着くための
裏階段が
このビルにはあるのです という話を



1階のホールで
なかなかこない
エレベータを待ちながら
聞いていると
足元が揺らいで



ハンカチが一瞬被せられた と思うと
ビルは そのまま
15あまりの章のある
灰色の背表紙の本になっている
中にいるわたしには
もう読むことができないけれど
免疫に関する本のような気がする