海泡石

                                石は 3




その石は白い
とても軽くて
持っているかんじがしない


その石は水に浮く
繊維状の結晶が複雑に交差する 中に
空気を内包して



    (人になる代償に声を失ったその人は海の泡)



今日も東京は
透明な砂州のようなものが空にあらわれて
水は低い位置におりている
地上では信じる のひとことでなされる
ぞんざいな等式が重ねられ 
こころは日中の星のように黙る



その石は 白くて火に強く
軽くて手に馴染み
容易く色に染まる
水に浮くけれど
細かい気泡を出して 吸水し 
脆い部分から崩れてしまう



今日のこの等号の右側に
一体何を置く?
確信を失うことと引き換えに
もたらされたことばで
軽く漂い
水に溶け 砕けながら
誤解すら かすらずに
どう語る? とても近くて遠いこと