木を流す夢

         私はそれをそう名付けたら安心してしまいます                  



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白茶けた草の間をゆく
おおきな川があって
その中流
木を流す人がいる
腕くらいの太さの木が
おびただしく浮かんで
そこから川は
ゆっくりと
漂うものすべてを河口へと
向かわせる
道になりはじめる




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こちら側には見えない
遠い灯り
ウインチは沈黙して
誰もいない夜の木場は
黒の覆いがかけられている
コンクリートの汀に
月の欠片すらとけていない波が
ときどき小さい音をたてているけれど
どんな意味も拾ってはならない
コールタールとカラメルの
濃い夜の底から
あるかないかわからない程の
かすかな血の匂いが掬いあげられて
流れ着いた木々は生き物のように
いつのまにか身を寄せ合っている