歩くということ

            らんぶる・すくらんぶる2




少女の群に神の祝福あれといへばあとずさりする影のいくつか



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愛 ということばは
学校にも家にもあふれていて
とても苦手だった
その名のもとになにもかもが許される
無自覚な傲慢さで
ひとを支配するような気がして



開いたオルゴールが
霧の中の集積場で
声のない朝の歌をうたっている
決してかたられることのない
ものがたりのことなどをおもう



じぶんだけのささやかなものがたりと
じぶんだけの信仰をまもって
かたることなくうたがうことなく
一生をおえる
世界のどこかに
いるかいないかわからない
そんなだれかの幸せを
私はどれだけ妬んだだろう



愛ということばで
懐かしさのかくされてしまった場所で
もうそのことばを使わなくなった人が
一人で住んでいる
たまに手を振る



もしその底に悲しみが潜んでいたというなら
そのひとつひとつを
いまにも消滅しそうな点
囲んだ掌の中でじっと動かない
蛍の光のようだったと
思えばよかったのかもしれないけれど



わたしにとって愛は
いまでもそれほど無力なことばではない
奪われた後の安逸も
奪った後の荒涼も
なにもかも匿されてしまう気がして



世界がわたしの作った檻で
それがことばでできているのなら
それをかいくぐってほんの小さく自由に



ここでのわたしは小さな矢印です