月に立ち


夢に市のたつときあれば人ごみに知らず誰かをさがしてをりぬ



月に立ち星を眺めし人の背のさみしき朝は上書きをいとふ



夜をかけて砂丘に結ぶ水滴の垂直に地下へとつたふいたみは



あるといふは不意におそろし見し方に赤く巨きな月のゐたれば



されば目を覚ましをれとの声ありぬ黒くしづかに羽ばたけるもの



いかなる風にもしばしは乗るらむ葉の脆き軽さをけさは見上げていたり



冬枯れの木の尖端にとどまりし雲をいつしか連れ帰る風