野分など



俎に並びて僅かな血を零すこの鯵二尾を夫婦となさむ



盲目鳥は闇夜の森におりきたる見えざる星と樹上に憩ふ



まぼろしの野分と思ふ木枯らしに降りたる星など吹き払われれば



冬へと続く銀の鋼線撓むれば水滴を恨むあすの悲しみ



水滴のひとつひとつにわが罪をたぐれば冬のロザリオとなる



売血といふを思へば野分去りて冬への道のしめさるるなり



かなしむべき刻にあらざるに洗はれし道の辺にふかき翳あり



漂ふ鳥みな置きざりにせしかたち持つ鳥ならぬわれには見えぬかたちを