夏の庭



うまく焼けなかったパンを持って
遠くの友人に会いに行ったけれど
お互いに話すことがない


それでもお互いに裸足の足を投げ出して座っていると
少女時代に戻ったようで
逆光に隠れていた彼女の顔も
目をそらしていた背後の荒れた庭も
暗闇に目が慣れたようになってくる


二人で夏草に足を踏み入れて
虫がいそうだの足が痒いだの文句をいいながら
ピカピカ光るゆすらうめの実をを手当たりしだい摘んで
(たまに食べたりしながら)
うすい甘さと渋さにまぎれて
種を吐き出すみたいに
「あなたは馬鹿だね」と言ってみる
「どっちが?」


採りすぎた実はジャムにして
固いパンにつけて食べてしまう
「甘いね」
「甘いでしょう?」