端的なこと


水無月の山と青田
いちめんのみどり のなかに
ぽつりぽつりと



・・・の土地はこうだった
・・・の家はこうだった
どこにでもあったかも知れない
ものがたり
自己劇化とはちがうルートの
ものがたりが



ひとの口の端にのぼる
じぶんが含まれてしまえば
とたんに陳腐で腹立たしく
離脱をねがい 流れていった
砂の粒



それでも
ものがたりが信仰になるとき
(あるいは)
信仰や禁忌が
ものがたりを呼びよせたとき
曲がり角に
小さく色を零していく
痛み みたいに
傷 みたいに
悲しみ みたいに



悲しむときのために
この色を 覚えておきます