森に隠された木



写真を整理しながらすこしずつ時を遡っていって
こどもたち2人が「すみれぐみ」だったことを知りました。
上の子と下の子は6学年はなれていて、生まれた場所も
幼い頃過ごした場所も異なっています。
私が本も読まず、日記も書かず、いつも小走りで過ごしていた頃でした。
思い出したのではなく、はじめて知らされた という感じ。


昔、住んでいた場所は駅から徒歩20分くらいの丘の上で
ときどきバスを利用していましたが、途中、窓から見下ろす庭に
うずたかく家財や束ねた雑誌などの積み上げられた家がありました。
最近よく話題になるゴミ屋敷というかんじはしませんでした。
門から玄関までの細い通路を残して とても整然と積み上げられていたから。
ときどき門の脇に年輩の方が腰を下ろして通りを眺めていました。
ある日、久しぶりにバスに乗ったら、庭を埋め尽くしていたものが
全てなくなっていて、広大な敷地にちいさな家だけがぽつんと残っていて
その家もすぐ取り壊されてしまいました。


木を森の中に隠すように
大事なものをあの人は隠していたのかな と思います。
その木は本のように読むことができて
読むと失われてしまうから。
なんてね。


なにも隠そうとはしていなかったけれど
私の森はバーナムの森のように動く。
枝枝を重ねたまま どこまでも。 それでも


その時間はもう過ぎてしまっていても 
風景が色づいた一瞬があったこと。
それらが 今も私のどこかで
ちいさな音楽のように響くことがあることに驚かされます。
本当に驚いてしまって、何度も手を止めました。




はじめてピアノにさわる (1歳6ヶ月)