武井武雄手芸図案集



こんなに可愛らしいのにこんなに厳しい。



凡そ手藝に興味をもつ程の者は、まづ手藝へのABCとして圖案からはいるべきだと
信じます。圖案に對する観照眼が開け、創作の能力をもつ迄に至つてはじめて手藝實
技の門を叩くべきで、技術からはいつて行くのは順序として大きな錯誤であります。
圖案の過程は必ず最初に踏むべきもので、これを飛越して行つた手藝家はたとえ十年
螢雪を友としたところで、要するに一介の職人たるに過ぎません。家庭に取入れるべ
き手藝には大量生産の必要が更にありません。即ち職人を必要としない所以でありま
す。無味乾燥糠を噛む生活に陥り易い我々の日常に、なるべく簡便な時間と材料とで
手輕に藝術味を取入れ、物の置方一つにも奥ゆかしい匂ひと爽やかな滋味とをつけ様
とする家庭の手藝にあつては、むしろ圖案は一課程と見るべきでなく、黒白を決する
鍵とさへ見ることが出来ます。        

                          一九二八年九月  著者


職人の域に達したら凄いじゃないか と私などは思うけれど、これは身に合った独創の
ことを言っているのでしょうね。プレタポルテよりオートクチュールのような。(ちょっ
とちがう?)


"刺繍で甦る童画の世界"
「日本中、裏長屋の柱まで、安い金で美化される民衆的手藝こそ眞に望ましい限りです。」


これは軽い気持ちで刺してはいけない…