雨宿 り


雨音はしないけれど
クスノキの下は
淡い樟脳の香りがします
細い枝、やわらかな葉が重なり合う樹木は
読んだことのない本に似ている
まだ見たことのない都市にも似ている
固い結び目を解いて
ゆるやかに追憶に結びなおしたら
きこえてくるでしょうか 水音


木の季節を雨に向かうと
白くて淡いちいさな花が揺れて
アオスジアゲハがちらちらと飛び交う
いつか見た景色の裾をちいさな子の手が
つかんでいるけれど
休みの時間は終わり
眠るわたしを木の下に残して
透明傘をひらき
雨粒がつたうのを眺めています
今度こそ聴こえない喧騒の方へ
見知った雑踏の方へ
踏み出す私の方が夢かな




出張月がはじまりましたが
こどもは電気が切れると
電球を取り替えもしないで
ムードがある とかいいながら
暗いお風呂に長々と入っていたりします。
地震がきたらどうするの!」と言ったら
「どうせ停電になるから平気〜。」と言います。
たしかにそう。そうなのだけど。