紙箱の


なかに街をつくる
軽くて整然とした小さな街を
その街の中の一つの家で眠り
子どもと犬にごはんを作る
そこから話すことばを探す
花を生けて 頬杖をついて



箱の中でひとを愛する という
説明できるものに愛をあてはめて



花はちいさな世界の破れ目で
いまにも降って来そうな雨雲の流れる空が
すぐそこに見えている
どこまでも茫漠とした方位のない野原に
草が靡いていて
呼ばれること 知らずに置き換わることのよろこびと
慄きに比べれば
絶望なんて一枚の絵画のようなものだよ






膝の上に
読まなくても滞在することを許す本がある


乗客になる


目を閉じていても列車は川を渡る


枕木になる