風景は


引用です
状況が説明へと向かいたがるのが疎ましく
どんな物語もなぞるべきではないときの
そしてそれらの風景を
私は私ひとりで見たにもかかわらず
結局いつかは、ひとつのアルバムに貼ってしまうのかもしれない




(冬の中にゆっくりと消えて行くようなもう一つの物語に)




そのひとは覚えていないと思うけれど
ひとつだけ、一緒に見た風景があって
珍しいものではなかったその景色を
引用せず、どこにも貼らずに
暮れたり明けたりするにまかせている
そういうものがもう少し欲しかったな と
すこしさみしく思ったりします
十分すぎるだろう と思ったりもします





(あのとき なにを祈ればよかったのだろうね。)