ある種のことばは


はじめて読んだ場面を連れて来ます
家にあった現代詩全集(書肆ユリイカ)ではじめて吉岡実の「僧侶」を読んだときの
納戸の畳の暗さ(禅僧とか神父がわりと身近な環境にいましたが、そのどちらでもない
どこか異国の僧侶 というものを不思議と即座に思い浮かべました。)や、
高校帰りに正津勉の「青空」をはじめて立ち読みしたときの有隣堂厚木店の蛍光灯の明るさや
制服の重さ。
仕事帰りに長谷川龍生の「泪が零れているときのあいだは」を立ち読みした飯田橋の駅ビルの
本屋の匂いと胸ポケットに挿していたボールペンの感触も覚えています。
(立ち読みばかりしているみたいですが、この2冊は購入しました)
あまり読書家でないからかも知れませんが、これら突然蘇る記憶を媒介するものは音楽にとても
似ていると思います。
きっとこれからも何度も思い出すこれらのことを、あの時あれほど驚いたのにずっと長い間、
忘れていました。


思い出せて良かったと思っています。すべての記憶がこんな風であればいいのに。