森の石


薄底の靴をはいてでかけると
足裏に小石のかたちが触れてくる
夏日が真上から射して
ここは以前は川底だったかしら?
流れた時間の痕跡 のような
触れれば痛い ちいさなかたち



帰って靴をぬいで それから
森のことを考える
もうずいぶんながく行っていない
迷うための道の その奥まで踏み入ると
ふかふかと沈んで靴を包み込む
生きているものと
生きていたもの
なにも触れない ただ堆積するだけの 
葉に遮断されたコロニー
木漏れ日を甲虫が横断する
賑やかに湿った眠り



木々の根のとどかない ふかいところに
踏まれたことのない石が
細い水音を聴きながら
起きている 
ごくたまにうたっている
そこにしかいないのに
帰りたがっている