覚書2


見えない侵食より怖ろしいものは いくらでもあらわれるから
不安に慣れることが実はたやすいように
いつか 罪も疲弊してしまうことがあるのかもしれない
都市から遠く 逃げる自由も 逃げない自由もなかった人々のこと
その事実だけが刻み込まれて



なにかの象徴のようになってしまった場所が
更地になるのを見届けることなく
わたしもあなたも去るのかもしれない



彼方に鳥たちが旋回するのが見えて
遠く水が引いた後には
誰によって集められたのかわからない石が
いつのまにか配置されている
一度も音の流れたことのないように見える場所で
それでもわたしはわたしの非現実のほうが怖ろしいというなら
もどるとしても おちるとしても
この先にむかってなのでしょうか?



名付けてはならない
わたしという領域に囲い込んではならないものの中で
ひとつひとつ別れながら呼び戻していく遠いかたち
遅すぎた空白ののちに
内側にだれかが
だれかのことばが
ようやく音として流れはじめる