回廊の緑の光1

......................................................................................羽博くものそれは



ことばについて
すこし書いてみます
最後までうまく扱えなかった
楽器のような
ことばについて
伝わってしまうことは
怖ろしいことだと
ついこのあいだ
書いたわたしが



夜半ふと目覚めると
暗い部屋の隅に犬が座って
こちらを見つめていたりします
「寝ないの?」
犬は見つめるばかり



たとえば これを
届かない呼びかけではなく
目覚めてから ふと気づいた
外からのまなざしへの
応答だと思う というのは
どうでしょう?
沈黙のうちに犬の首筋に触れて
目をのぞきこむことで事足りるような
ほんの小さな
応答であるとしても



深夜のどこかに
誰かによってさし出されたことばは
孤立し立ち竦んでいるわけではなく
たとえば風を頬に受けるように感じた
外からの訪れへの
応答として生まれたものであるとしたら
どうでしょう?



なにかが動くわけでも
外部と和解できるわけでもないけれど
この世界が自足ではない
羽搏<応答にみちているのだとしたら