窓 まで 満ちる



雨降ってきそうな空に
雲と雲ではないものを
閉じ込める 夢



はるか高くに
曖昧の水位があがって



新雪の中にいるように
私には私の音も聴こえない



人はソナーのように
反響によっても位置を確認しているというのは
多分本当にそうなのだろう
目を閉じると闇に浮き上がる この感覚は
それでも私には親しい 不安とともに
僅かな安息も含まれているのかも知れなくて



こんにちは と呼びかけてみる
呼びかけて
そして何を言おう?



もうこんなに手の内を晒す愚かな詐欺師はいないという位
いろいろいってしまったので
わかるでしょう?
私にできることが何一つないと
こんな私が響く音を遮っているのだとしたら
とてもかなしい



雨降ってきたなら
とり急ぎ引き入れる
漂白された 夢
たたまれる安息は
全て終わってから



音は
放たれるべきです
受け取る誰かがいてもいなくても
反響しながら穿たれた谷を巡って
何度でも何度でも



行き着く場所が砂漠の果てか
空の亀裂かはわからないけれど
私には絶対に行きつけない場所に
迷い込むようにたどり着いた最初の一音が響く奇跡を
それでも私ほど夢見ている人間は
おそらくいないと思う